10月4日に広島カープから来季の契約を結ばないと伝えられ、現役引退の意向を表明していた長岡市出身の投手・今井啓介さん(30・中越高)が、このほど新潟野球ドットコムの取材に応じた。今井さんは「やり切ったので悔いはない。これまでのファンの応援に感謝の気持ちを伝えたい。今後は未定だが、野球に関わる仕事をしていきたい」と語った。12日に地元でファンに現役引退を報告する。
現役引退を決めた今井啓介さん プロ12年間で一軍で114試合に登板
8勝20敗1セーブで防御率3・59の成績を残した
Q現在の心境は
今井啓介さん(以下、今井)「やり切ったので後悔はない。自分では自分のやってきたことに満足している。去年、一軍に上がることができず、戦力外になるかもしれないと焦った。でも今年も契約してもらうことができた。『今井は終わった』と言われ、それを見返したいという思いで、1年間自分でできること全てをやってきた。フォームを変え、オフのトレーニングでいろいろな教えを受けた。やらされた練習でなく、自分で考えた練習をやり切った。その結果、今年また一軍に上がることができた。4試合だけだったが、自分が1年間やってきたことに満足している。だから(11月15日の)トライアウトも受けない」
Qプロ12年間の思い出は
今井「2012年9月1日の阪神戦(甲子園)で初完封したことは一番の思い出。その年の5月にエコスタで凱旋登板し、地元でプロとして投げることができたこともうれしかった。辛かった思い出は…入団1年目の夏にイップスになったこと。指先の感覚がおかしくなって、キャッチボールもままならない。酷かった時はカープの二軍練習場ブルペンでネットの向こうにある瀬戸内海にボールを入れたことも。1年目で『どうしよう』と動揺した。新潟県出身のトレーナーと2年目のオフに出会えて克服できた。その後、2008年にウェスタンで最多勝争いをし、2009年7月に一軍に初昇格。9月に初勝利を挙げたことも思い出に残っている」
地元の野球教室で指導する今井さん
Q今季は2年ぶりに一軍登板を果たした
今井「とにかく結果で見返そうという気持ちが今年の原動力だった。二軍で結果を出し、6月15日に2年ぶりに一軍に昇格。4試合だけだったが一軍で投げることができた。ただ、そこで結果を残せなかったのは、やはり自分の限界だった。今の球では抑えられないと思い知った。追い打ちをかけるように一軍昇格の頃に左ひざの半月板を痛めてしまった。左足に体重を乗せることができず、球速も落ち、ランニングもままならない。でも意地でも二軍の試合に出続けた。今季は投手陣で上から3番目の年齢だった。若手の前で弱い姿を見せられなかった」
Q広島は今季、セ・リーグ2連覇を果たした
今井「今季途中でケガをしてしまったが鈴木誠也は物凄く練習をする。鬼気迫るものがあるくらいバットを振っている。投手で言ったら中田廉。一流になる選手は練習で手を抜かない。そういう姿をプロを目指す子どもたちに伝えたい」
Q今後は
今井「今後は未定だが、できれば野球に関わる仕事をして、プロの世界で自分が経験したこと、得たことを伝えられればと思う。ファンの皆さんには、12年間、温かい応援をありがとうございました、と感謝の気持ちを伝えたい」
◎中越高の後輩・渡邉雄大を激励 「キャンプから首脳陣にアピールを」◎
ソフトバンクに育成6位で指名された中越高の後輩・渡邉雄大(右)を激励
今井さんは11日、10月26日のドラフト会議でソフトバンクから育成6位で指名された新潟アルビレックスBCの渡邉雄大投手と対面。「キャンプからアピールをして一軍で活躍を」と中越高の後輩を激励した。今井さんは「渡邉は左のサイドスローで高校1年生の時から印象に残っていた」と話し、「自分が現役を引退する時に後輩がNPBに入るのも縁。NPBに入るだけで満足せず、一軍で活躍することを目標に頑張ってほしい」と話した。
渡邉投手は「今井さんを目標にNPBで活躍したいと思っていた。キャンプからアピールをして開幕一軍を目指したい」と決意を新たにしていた。
(取材・撮影・文/岡田浩人)