NPB(日本野球機構)イースタンリーグ・埼玉西武ライオンズ対東京ヤクルトスワローズの公式戦が17日、埼玉県所沢市のメットライフドームで行われた。昨秋のドラフト6位でヤクルト入りした鈴木裕太投手(日本文理高)が二軍公式戦初登板。7回裏の1イニングを投げ、無死満塁のピンチを招くも無失点に抑えた。2死後、プロ入り2年目の西武・綱島龍生内野手(糸魚川白嶺高)との“新潟県出身”対決も実現し、鈴木が152キロの直球で2ストライクに追い込んだ後、132キロのフォークボールを低めに決め、空振り三振に抑えた。
二軍公式戦で初登板 1回無失点に抑えた鈴木裕太(日本文理高)
鈴木は7対1と6点をリードして迎えた7回裏にマウンドに上がった。西武の四番・川越に自信のある直球を投げ込み、球速は140キロ台後半をマークしたが、制球がやや乱れ四球で歩かせる。五番の呉には右前安打、六番の金子一には中前安打を許し無死満塁のピンチを招くも、「打者が詰まっているのが分かったので、直球で押そうと思った」とその後も直球を中心とした組み立てを続ける。七番の山野辺をライトファウルフライに、八番の高木渉をセンターフライに抑える。2死満塁で九番・綱島を迎え、球速がさらにアップ。152キロの直球をファウルにさせ、追い込むと、最後はフォークボールが低めに決まり、空振り三振に抑えた。鈴木は1回無失点で初の公式戦マウンドを終えた。試合はヤクルトが7対2で逃げ切った。
◇ヤクルト・鈴木裕太投手の話◇
「初めての登板が、(メットライフドームという)一軍の試合の舞台である球場で、うれしい反面、緊張した。自分の投球がどうできるかをずっと考えていた。初球の直球はいい感じで投げることができたが、相手打者のスイングが速く、もっと腕を振ろうと意識したら、力が入りすぎて四球を出してしまった。次の打者に安打を打たれ、1、2塁になった後、直球で詰まらせることができた(結果はセンター前の安打)。満塁になっても、焦りより(直球で)いけるかなと思った。(2人をフライで仕留め)フライを打たせようと考えた。(2死満塁からの綱島への)最後の球はフォーク。変化球が自分の課題で、シート打撃ではカットされたり、振ってくれなかったり、という状態だった。最後に変化球がいいところに決まり、よかった。しばらくは短いイニングだと思うので、きょうのように打たれても0に抑えられるように心掛けたい。直球には自信があるので、それをいかせる変化球をと思う。(新潟のファンへ)自分が活躍している姿を見に来てもらったり、SNSなどで見ていただき、自分の姿を見て、野球を始めるような子どもが出てくれるように頑張りたい」
新潟アルビレックスBCで監督を務めた高津臣吾二軍監督(右)も期待を寄せる
◇ヤクルト・高津臣吾二軍監督の話◇
「(鈴木の初登板の投球を見て)びっくりした。これまで練習のブルペンで見てきて、球速があることも、ある程度球が荒れるのも予想はしていたが、試合になるとアドレナリンが出ているのか、思っていた以上にいい球を投げていた。ちょうど2年前に梅野(雄吾)が高卒1年目で投げさせた時に150キロ台を連発したのを思い出し、重なって見えた。ストライクが入るとか、変化球がどうとか、そういうのは気にせず、とにかく腕を振って強い球を投げるというのは、みんなが目指すがなかなできない。鈴木はそれを持っている。すごく楽しみ。育て甲斐がある。なかなかファームが勝てない中、きょうはいい形で点数を取り、鈴木に投げさせるというのはいろいろな意味があったが、無死満塁から0に抑えたのはもっと大きな意味があった。自信になったかどうかは分からないが、2試合目、3試合目としっかり投げてもらいたい。スタートとしてはすごくいいものを出せたと思う。あれだけ強く腕が振れ、強い球が投げられるのはなかなかできない。それだけではもちろんプロで通用しないが、なかなか速い球を投げる投手がいなくなってきている時代に、逆行して強い球を投げられる可能性のある投手というのは楽しみ。(新潟のファンへ)これから先、(鈴木が)一軍に入ってテレビに映る姿を見ていただきたいと思うし、そうなる可能性は十分にあるので、温かく見守ってくれたらと思う」
九番・三塁手で先発出場した西武・綱島龍生(糸魚川白嶺高)
無安打に終わったが第1打席ではセンターへ強い当たりを見せた
西武の綱島はこの試合、九番・サードで先発出場。第1打席は強い当たりのセンターフライ。第2打席は見逃しの三振。第3打席は右腕に死球で出塁。第4打席は鈴木の前に空振り三振に倒れ、無安打に終わった。ただ試合前のインタビュー取材では、「スイングの強さが上がった」と明るい表情で話し、自主トレからキャンプを経ての成長に手応えをつかんでいる。
◇西武・綱島龍生内野手の話(試合前取材)◇
「(開幕1か月だが)今のところ、打撃は調子がいい。打撃コーチと練習をしながら、いろいろ試しているが、自分に合っているスイングができている。(キャンプでは)スイングの強さが上がった。かなり振り込んだ。守備はまだまだ。今はまだ基本練習をしっかりやり、しっかりした形を身につけられれば。(今季の目標は)まずは二軍で3割以上打たなければ一軍で通用しない。打撃で3割以上、守備で失策をしないようにしたい。(6月30日には南魚沼市でイースタン公式戦があるが)地元でやれる機会。少しでも成長したところを見せたい。これからの練習でしっかり打撃も守備も練習したい。(松井稼頭央二軍監督からは)キャンプの守備で基本の形を教えてもらい、自分の力になっている。(きょうの相手のヤクルトに鈴木投手が入団したが)対戦してみたい。球が速いと聞いているので。(新潟のファンへ)今年の目標は一軍の試合に出ること。6月の新潟開催で成長したところを見せられたら」
試合後、鈴木が西武側の控室を尋ね、挨拶した。「負けたよ。悔しいなあ。でもワクワクした」と話す綱島に、鈴木は「今後もよろしくお願いします」と挨拶。互いに今後の切磋琢磨を誓い合った
(取材・撮影・文/岡田浩人)