高校野球の春の大会「第146回北信越高校野球・新潟県大会(春季県大会)」が28日に開幕する。今年の新潟県の高校3年生には「今秋のドラフト上位候補」と評価が高い日本文理・田中晴也投手や帝京長岡・茨木秀俊投手をはじめ、スカウトが注目する選手が複数いて、3月から4月にかけて「新潟県内の高校にかつて例がないほどの数」(高校野球関係者)の球団数と人数のプロスカウトが来県し、選手たちを視察した。春季県大会に幹部クラスの視察を予定している球団もあり、28日から始まる大会のバックネット裏に多数のスカウトの姿を目にしそうだ。
紅白戦で登板した日本文理・田中晴也(3年) 既に140㌔台中盤を計測している全国的な注目を集めるのが日本文理3年のエース・田中晴也。2年生の昨夏には県代表として甲子園に出場し、初戦の敦賀気比(福井)戦で敗れたものの147キロの自己最速をマーク。昨秋の北信越大会では準々決勝で星稜(石川)に敗れたが、大会初戦に自己最速を更新する148キロを叩き出した。186センチ、92キロの堂々とした体格で、投手としてだけでなく打者としても非凡なセンスを見せている。
9日の紅白戦で今季初の実戦登板に臨み、140キロ台の直球を連発。視察したスカウトは「一冬を越えて体が大きくなり、スケールを増している」と評価した。別のスカウトも「順調に力を伸ばせば(ドラフト)上位で消える。1巡目もありうる」と話す。
田中は「常時140キロ台を出すことができ、冬場と春先の投げ込みの成果が出ている」と手応えを感じている。日本文理は4月25日まで対外試合が禁止となり、紅白戦で実戦感覚を磨くことになったが、「どんな打者が相手でも対応できるような配球、高さを意識して投げることができている。今の時期は『良い所を(スカウトに)見せよう』というよりは自分の課題を潰すことを心掛けている」と落ち着いている。
4月10日にロッテ・佐々木朗希投手が完全試合を達成した試合を、田中はインターネット中継で見た。「試合後半は見た。佐々木投手は真っすぐとスプリットのほぼ2球種で抑えた。自分が秋の課題として掲げた『相手を完璧に抑える』というものを現実のものとして見ることができ、同じ投手として刺激を受けた」とさらなる成長を誓っている。
帝京長岡の茨木秀俊(3年) 最速146キロの直球とキレのあるスライダーが武器
帝京長岡3年の投手・茨木秀俊も田中と並ぶ今秋ドラフトの注目選手である。北海道の出身で、芝草宇宙監督(元日本ハム投手)の指導を受け、順調に力を伸ばしてきた。流れるようなフォームからキレのある直球とスライダーを低めに投げ集める。
去年秋の北信越大会では初戦で松商学園(長野)に2対3で惜敗したが9回を完投し、被安打6、9三振を奪う好投で評価を上げた。昨秋の時点で最速は146キロに。4月に行った練習試合では被安打1、15三振を奪い相手を完封し、集まった3球団のスカウトの前で快投を見せた。
芝草監督は「冬場のトレーニングをしっかりやってきたおかげで“強さ”が出てきている。全力で投げなくても抑えられる球の力がある」と成長した姿に目を細める。練習試合を視察したパ・リーグのある球団スカウトは「まだまだ伸びる要素が多い。フィールディングも良く、身体能力を含めて総合力が高い投手。3位くらいの評価をする球団が出てきてもおかしくない」と話す。
冬場のトレーニングで3キロ体重が増え、対戦した打者が「重い」と評する直球に凄みが出てきた。茨木自身は「進路はプロが目標だが、今は甲子園に行きたいという思いが強い」と語り、帝京長岡の初の甲子園出場を自らの手で勝ち取る決意を強めている。
東京学館新潟の中町龍之介(3年)
このほか、右腕でスカウトの注目を集めるのが東京学館新潟3年の投手・中町龍之介。140キロ超の直球とタテに鋭く落ちるスプリットボールが武器の本格派。昨夏の準々決勝・新潟明訓戦で先発・好投し、敗れはしたものの評価を高めた。秋もベスト4入りの立役者となった。旅川佑介監督は「一冬を越えて体が大きくなった」とその成長を実感している。あるスカウトは「タテの変化球が大きな特長。球の角度も良く、今後の成長が楽しみな投手」と評価している。
新潟明訓の反町謙介(3年)は右の長距離砲としてさらなる成長が期待される
新潟明訓3年の内野手・反町謙介は身長189センチの右の大砲で、昨春の北信越大会決勝の敦賀気比(福井)戦では逆転3ランを放つ活躍を見せた。今春の練習試合でもスカウトの目の前で豪快にサク越えを放ち、度肝を抜いた。新潟明訓の島田修監督も「小さくまとまらず、大きく育ってほしい」とその成長を見守ってきた。西日本のある球団のスカウトは「あの長打力は天性のもの。大学など上のレベルでさらに成長すれば面白い存在になる」と期待を寄せる。
この春は多くの球団のスカウトが県内の高校を訪れた
(取材・撮影・文/岡田浩人)