日本高野連は6日、ホームページ上で公表しているプロ志望届提出者を更新し、新潟産大附高3年の前川哲投手(18)が新たにプロ志望届を提出したと発表した。前川投手は180センチ、80キロの堂々とした体格から140キロ台中盤の直球と切れのある変化球を投げ込む。同校が今春の新潟県大会で20年ぶりとなるベスト4進出の原動力となったエースである。前川投手は取材に対し、「BCリーグのトライアウトに挑戦し、最終的にはNPBを目指したい」と決意を話した。
プロ志望届を提出しBCリーグに挑戦する意向を明らかにした前川哲投手
「自分の好きな“野球”が仕事になる場所が一番いいと考えた」と前川は決断に至った経緯を落ち着いた口調で話し始めた。シード校として優勝候補の一角に挙げられながら今夏の新潟大会では3回戦で敗退。「高校野球で完全燃焼した」と一度は本格的な野球の世界から離れようと考えた。しかし、野球への思いは断ち難かった。
前川の潜在能力を高く評価している松尾一基監督をはじめ周囲も放っておかなかった。「上のレベルで挑戦してみたら」と勧められ、前川も決断した。「もし挑戦してダメだったら悔いなく野球をやめることができると思った」。大学や社会人の誘いもある中、あえて独立リーグのルートインBCリーグを選択した。「独立リーグなら毎日野球のために動くことができる」。9月14日にはハードオフ・エコスタジアムで新潟×信濃の公式戦も観戦。「攻守交代の駆け足が早く、投手陣がまとまっていた」とその印象を話す。11月におこなわれるBCリーグトライアウトに向けて現在は「朝早く学校でトレーニングをしたり、土日を中心に練習で体を動かしている」と準備に余念がない。
140キロ台の直球と切れのある変化球が武器(撮影:ことし5月)
同じくプロ志望届を出した日本文理の飯塚悟史とは中学時代に投げ合い、0-1で敗れた。「雲の上の存在だと思っていた」と言うが、今春ベスト4に進出したことで「少しだけ近づけた気がした」とも話す。飯塚が23日のNPBドラフト会議での指名が有力視される中、前川は「ライバル意識はありません。ただ最終的には自分もNPBを目指したい」と力を込める。「高校で普段の生活面など野球以外でも成長できた」と話す前川。松尾監督は「もっと力を伸ばせてやれたのではという思いもある。1つ上のレベルへ行った時にどれくらい成長できるのか楽しみ」とエールを送る。
11月には最初の関門となるBCリーグトライアウトが待っている。「持ち味であるストレートの威力や変化球の曲がりをアピールしたい。まだ習得できていないこと、野球でわからなかったことがたくさんあるので、BCリーグで身に付けていければ。できれば地元の新潟でプレーしたい」。ことしの新潟県の高校球界を沸かせた剛腕が自らの手で夢への扉を開けようとしている。
(取材・撮影・文/岡田浩人)