夏の前哨戦となる「第132回北信越高校野球・新潟県大会」(春季県大会)が29日から開幕します。そこでこの春初めてベンチ入りした1、2年生のうち注目の新戦力を(上)(中)(下)の3回にわたって紹介します。第1回は日本文理高校の1年生キャッチャー・川村啓真選手です。
「ガツン」・・・高めの直球を思い切り振り抜いた。打球はセンター後方にあるネットを大きく越え、学校の玄関前まで転がっていった。逆転の2点本塁打。打ったのは今月入学したばかりの日本文理1年生・川村啓真だった。26日、新潟市西区の同校でおこなわれた早稲田実高との練習試合。ファーストを守る早実の1年生スター候補・清宮幸太郎が注目される中、その目の前を同じ1年生で日本文理の“新4番打者”川村が駆け抜けていった。
早稲田実との練習試合で本塁打を放った日本文理1年・川村啓真選手
話題の清宮幸太郎選手(左)を迎え投手をリードする川村選手(右から2人目)
富山県黒部市出身。黒部市立桜井中学校では強肩強打のキャッチャーとしてその名が全国に知られていた。去年8月、新潟市でおこなわれた北信越大会に富山県代表として出場。本格派右腕の稲垣豪人とともに全国制覇を目指す北信越期待のバッテリーとして注目を集めていた。しかし全国大会出場を目前にした準決勝の最終回、死球で出た走者を3塁に置いたピンチで痛恨のバッテリーエラー。無安打で1点を献上し、そのまま敗れた。ホームベースを前にうなだれる川村の姿がそこにはあった。
去年8月の北信越準決勝で根上中(石川)に決勝点を許した稲垣豪人投手(左から4人目)
バッテリーエラーで決勝点を許し、うなだれる川村啓真選手(去年8月・新潟市)
高校進学にあたっては富山県内をはじめとした各県の強豪校からの誘いがある中、「施設が整っていて、一番野球ができる環境が日本文理だった」とあえて県外へ出ることを決断。中学時代の苦い思い出の地でもある新潟へやって来た。日本文理の印象については「(09年の)準優勝や去年夏のベスト4の印象が強い。特に去年夏の甲子園での富山商との試合(3回戦)はサヨナラで勝つ(新井の逆転サヨナラ本塁打)という強さが印象的だった」と話し、バッテリーを組んだ稲垣とともに今春、日本文理へ入学した。
川村の打力は4月中旬におこなわれた練習試合で発揮された。今春のセンバツ出場校・松商学園(長野)戦で実戦デビューすると、いきなり本塁打を叩き込んだ。その後も右に左にヒットを量産。その活躍ぶりに大井道夫監督も「練習試合で(打率)7~8割くらい打っている。野球に対する考え方がしっかりしていて、物怖じしない。上級生のピッチャーに対しても自分からマウンドに行く。キャッチングも肩もいい。使わざるを得ないでしょ」と絶賛。春の県大会で正捕手の背番号2を与え、四番打者で起用する方針だ。日本文理で1年春での正捕手、そして四番打者起用は「初めて」(大井監督)という。
3年生・山口尚輝投手(左)とマウンドで話す川村選手(右)
1年春でのレギュラー入りに川村は「四番打者ということはあまり気にしない。背番号2の自覚を持ってプレーや態度で示したい。経験は少ないが監督が選んでくれたことに応えたい。まだ未熟だが3年生の投手のいいところを試合で出せる配球をしたい。チームが勝つためにどうするかを一番に考えて、まずは北信越大会に行きたい」と意気込んでいる。172センチ、76キロのがっしりとした体形がグラウンドでは一回り大きく見える。入学からわずか1か月で掴んだ“正捕手”と“四番打者”の肩書きを引っ提げて、川村が日本文理の中心選手としてデビューしようとしている。
(取材・撮影・文/岡田浩人)