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屈指の左腕「自分の投球できた」・・・糸魚川・石川勇二投手

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延長10回。1死満塁のピンチ。この夏、糸魚川の石川勇二が投じた309球目となるボールだった。新発田農のバッターが弾き返すと、打球はセカンドへと転がった。狙い通りの内野ゴロ。途中交代したセカンドの選手がグローブからボールを取り出し、バックホームしようとした瞬間だった。

強く降りしきる雨でボールが手のひらから滑り落ちた。

白球がグラウンドに落ちる。慌てて拾ってホームに投げたが間に合わなかった。痛恨のサヨナラ負け。その瞬間、県内屈指のサウスポーの夏は終わった。

糸魚川は延長10回サヨナラ負けで力尽きた(左端が石川勇二投手)

昨夏ベスト4に進出した糸魚川。その原動力は当時2年生だったサウスポーの石川だった。130キロ台後半の直球に鋭く曲がるスライダーとチェンジアップ、そしてピンチでもインコースを突けるマウンド度胸と制球力が抜群だった。今年春の大会には複数のNPBスカウトが「石川詣で」のために足を運んだ。

地元・糸魚川でも周囲の期待は高まっていった。しかし石川は落ち着いていた。
「周りからの目もあり、私生活もしっかり過ごすことができたと思う」
昨夏は準決勝でスタミナ切れのために力尽きたことから、走り込みを増やした。連投でも疲れない体力を養ってきた。初戦は延長14回を1人で投げ抜いた。球数は173。
中1日で迎えた17日の3回戦は粘りの投球を続けた。1点をリードされたものの我慢の投球を続けた結果、終盤8回に仲間の集中打で逆転し、4-3とリードした。

しかし、リードを守り切れなかった。次第に強く振るようになった雨が、石川の体力を奪っていった。8回に追い付かれると、延長10回に力尽きた、

「初戦の疲れはなかった。相手が強かった。みんなが自分を支えてくれた。最後のプレーは雨の中で仕方ない。自分の投球はできました」・・・試合後、石川はさばさばした表情で振り返った。この夏、1人でマウンドを守ってきた男は決して言い訳をしなかった。牛木晃一監督は「初戦で延長14回を投げ、疲れがないというのはウソになると思う。よく投げてくれた」とねぎらった。

「牛木監督のもと練習ができたことが楽しかったですし、悔いはない。大学で野球を続けたいと思っています。できれば指導者になりたいし、チャンスがあるならプロも目指したい」
石川は最後まで涙を見せなかった。それは充実した高校野球生活を送ってきた証だった。

(取材・撮影・文/岡田浩人)


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