今季、新潟の野球界をけん引してきた3人の指揮官に2019年の自チームを振り返ってもらい、来季への期待と展望を語ってもらう「回顧2019」。最終回の第3回は高校野球で今秋の新潟県大会で8年ぶりに優勝し、北信越大会で2勝を挙げベスト4進出を果たした北越高の小島清監督(44)に話を聞いた。今季の北越は春ベスト4、夏ベスト8、秋は優勝で北信越ベスト4と県内の高校で最も多くの公式戦を戦った。就任11年目。初の甲子園出場へ、「まだまだ成長できる」と今冬のチームの成長に期待を寄せている。
今季を振り返る北越高・小島清監督
Q今季は県内チームの中で最も多くの公式戦を戦った。
小島監督(以下小島)「去年秋は初戦敗退(東京学館新潟にコールド負け)をして、疑いながら入ったシーズンだった。春から夏にかけてチームは成長できたが、夏の準々決勝で負けてしまい、やはり悔しい思いはある。ただ、秋は想像以上に行くことができた。3年生の代は投手陣のバリエーションがあったが、新チームは主将でエースの阿部(柚士郎)を中心とした戦い方一択で迷いはなかった。一戦ごとにチームが成長してくれた。公式戦をたくさん経験できたことはチームにとって財産になった」
Q春はベスト4で、優勝候補の一角として夏を迎えた。
小島「夏は準々決勝の糸魚川戦(1対2で敗戦)が一番の山場と思っていた。左の渡辺(勝誠)くんへの対策を万全にして試合に臨んだ。先制した後に伊藤(想)くんの本塁打で追いつかれ、ペースが掴めなかった。後悔があるとするとあの日の過ごした方。3年生たちは一生懸命練習するメンバーだったので、午前中に学校でしっかり打ちこんで第4試合に入った。そこをやり過ぎかなと思うくらい練習して試合に入ったが、今振り返るとそこをもっと自分が抑えろと言えればよかった。試合では打撃が重かった。熱中症になる選手もいた。コンディショニングには十分気をつけていたが、そこに後悔がある」
Q秋の新チームがスタートした時の手応えは。
小島「新チームは引っ込み思案の2年生たちが多く、控えめでおとなしかった。なかなか主将が決まらず…真面目だが互いに本音で話せない部分があった。そこで阿部に『おまえがやるしかないだろう』と言った。阿部は前チームの敗戦時も最後に投げて、一番泣いていた選手。先輩たちの意思を一番受け継いでいるのは阿部だろうなと思っていた」
主将、エースとして秋活躍した阿部柚士郎投手
Q秋は阿部投手の成長が大きかった。
小島「3年生の先輩たちがいる時は、短いイニングを力任せに放っていたが、自分が主将になり、チームのことを考えて投げるようになって、力を入れたり、抜いたり…投球の幅が広がった。秋4回戦の関根学園戦では力んでしまったが、次の試合はいい投球ができた。修正能力が高くなった。チームにとっては主将の阿部を助けようという雰囲気が生まれてきた」
Q秋は日本文理、新潟明訓、中越と、ここ10年の甲子園常連校が敗退していった。
小島「負けられないというプレッシャーは、なかった。決勝(新潟産大附戦)も初回から主導権を握ることができた。最近実感していることがあり、余力を残しながら勝ち上がって行くとチーム力が上がらない。その都度出し切っていかなければ力がつかない。秋は4回戦で関根学園、準々決勝で長岡工、準決勝で加茂暁星、決勝で新潟産大附…1つも気を抜けなかった。チームは一戦ごとに強くなっていった」
8年ぶりに秋の県大会を制した北越 一戦ごとに力強さを増していった
Q今夏は東京学館新潟が準優勝、秋も新潟産大附が準優勝、加茂暁星が3位…甲子園初出場を狙う私立校の競争が激しい。
小島「新潟県のレベルは上がっていて勝ち上がることはたやすいことではない。そこを勝ち上がることを視野に入れると、北信越でも通用するチームを作って行かなければクリアできない。自分の中での大きな変化は、今までは自分たちに『欠けているもの』『足りない部分は何か』を考えてきたが、そう考えるのははやめた。ここ2年くらいのこと。100点が満点で自分たちが何点足りないかと考えるより、秋が100点だったとすると、春には200点、300点、夏には500点のチームにしたいと考えるようになった。『もっとスケールの大きなチームを作っていきたい』と考えるようになった。それで自分の軸が定まった。ダメな部分を潰そうとするとそこに終始して、何も改善できずに終わっていた。今年の夏に向けても、負け惜しみに聞こえるかもしれないが、自分では春ベスト4からチームの力は伸びていったと思っている。結果としての甲子園という結果はついていないが、夏が頂点のチームづくりはここ2年くらいできている手応えがある」
チームを率い11年目の小島監督 初の甲子園へ「まだまだ成長できる」と話す
Q北信越では惜しくも準決勝敗退、ただ、大きな経験となった。
小島「北信越も県大会と同じで、次の試合のことは考えなかった。一戦一戦だった。県外の1位校、代表校と試合をして、まだ乗り越える先を見ることができたのはいい経験だった。要は100点の先…県大会優勝が100点だったと仮定すると、200点、300点がどういうものなのかが分かった大会だった」
Q来季へ向けた意気込みを。
小島「秋はあれだけの短期間で成長することができた。ここからも歩みを止めることなく、試合をやりながら、他のチームが追いつけないくらい成長したい。まだまだできることがたくさんあり、例年以上に伸びしろはたくさんある」
(取材・撮影・文/岡田浩人)