ルートインBCリーグの2015年シーズンが11日に開幕する。新潟アルビレックスBCは福島ホープスと福島県郡山市・開成山球場で対戦する。新潟の選手たちは開幕前日となる10日、新潟市のハードオフ・エコスタジアムで最終調整をおこなった。入団2年目で初の開幕投手に指名された渡辺雄大投手(中越高-青山学院大出身)はブルペン投球で汗を流した。
赤堀元之監督(左)の前でブルペン投球をおこなう渡辺雄大投手
渡辺雄大はエコスタのブルペンで捕手を座らせて約30球、フォームを確認するように丁寧に投げ込んだ。変則的な左サイドスロー。「直球や変化球のリリースポイントを確認した。これだけいい投手がそろっているチームで開幕投手をやらせてもらえることを光栄に思う」。大卒入団2年目で大役を任され、素直に喜びを表した。その表情に必要以上の気負いはない。
中越高校のエース番号を背負い臨んだ2009年夏の新潟大会で準優勝。しかし渡辺にとってその記憶は苦いものでしかない。雨中のマウンドで制球を乱し、のちに甲子園で準優勝した日本文理打線に初回から滅多打ちにあった。その後、進学した青山学院大ではベンチ入りすら叶わなかった。しかし大学2年生の終わりには「NPBを目指したい」とBCリーグ挑戦を決めていた。「球は速くない、凄い変化球があるわけでもない、ただ身長の高い左投手。それでもNPBに行きたいと言っていた。『あいつバカじゃないか』と周囲に言われてきた」。
それでも大学の後輩やトレーナーが自主練習の相手をしてくれた。試行錯誤の結果、手に入れたのがサウスポーをいかした、打者から球の出どころが見にくい変則的なフォームだった。『キモいやらしい』・・・渡辺は自らのフォームをそう形容する。「打者が『とらえた』と思ってもとらえていなかった、打った感触はいいけど打球はそんなに伸びなかった、そういう打者が迷うようないやらしい投球が理想」と語る。入団1年目の昨季は7勝を挙げた。昨秋にはNPBスカウトがドラフト候補としてリストアップするなど、中央球界でも渡辺の変則フォームは注目されている。
初の開幕投手。渡辺は「相手投手が高塩(将樹・前富山サンダーバーズ)さんなので、1点2点の勝負になると思う。四球など無駄な走者を出すことでピンチを拡げないように気をつけたい。今年はインコースで勝負できるようにしたい。このオフいろいろとやってきた成果がこのシーズンに出る。それが楽しみ」とシーズン開幕を待ち遠しく思ってきた。高校、大学と決して陽の当たる場所にいた訳ではなかった。「最初はNPBに行きたいという自分をバカにした人を見返したい気持ちだった。今は練習に付き合ってくれた人たちや自分の夢を信じてくれた人たちに恩返しをしたいと思っている」。渡辺は今季の成績で自らが歩んできた道に光を照らすつもりだ。
◇新潟・赤堀元之監督の話◇
「楽しみと不安と半々。大きなケガをしている選手もいない。打撃は外国人の2人が長打が期待でき楽しみが増えると思う。渡辺雄大はブルペンでも試合でも安定した投球を見せている。期待も含めて開幕投手に指名した。相手の高塩投手は先日の対戦で打ち崩せない部分があったので、打者がどう塁に出て点を取るか。いい試合になると思う。キャンプから打者は振れていたので何とかしたい。デニング、キャンデラス、(新人の)纐纈や桑田がいて、いろいろな形の攻撃ができると思う。シーズン通して投手を中心に点をやらずに接戦でも勝つ形にしたい。サポーターの応援に応えられる全力プレーをしっかりやっていきたい」
(取材・撮影・文/岡田浩人)