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【高校野球】新潟明訓の新監督に島田修氏 「爽やかで、努力の跡が見えるチームを」

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春夏計8回の甲子園出場を果たしている新潟明訓高校は1日、新潟市江南区の同校で記者会見を開き、野球部新監督に村上高校の前教頭・島田修氏(53)が就任すると発表した。島田氏は1990年に高田工のコーチとして甲子園の土を踏んだ後、監督として1994年夏の新潟大会で準優勝。その後、新潟南の監督を経て、2012年から2年間、新潟県高野連の専務理事を務めた。島田氏は「久しぶりの現場復帰で決断には勇気が必要だったが、熱心に誘っていただいた」と話し、目指すチーム像として「爽やかで、しかしその裏で泥臭さ、努力の跡が見えるチームづくりに全力を尽くしたい」と意気込みを語った。

新潟明訓の新監督に就任する島田修氏 

島田氏は1965年生まれ。長岡市出身で、長岡高校、早稲田大学で内野手。1990年に高田工で教師となり、その年の夏に野球部が甲子園出場を果たした時にコーチとして甲子園の土を踏んだ。その後、監督に就任し、1994年夏の新潟大会では準優勝。新潟南の監督、県庁保健体育課を経て、2012年から2年間、新潟県高野連の専務理事を務めた。今春まで村上高校の教頭を務めながら、新潟県青少年野球団体協議会のプロジェクトリーダーとして、球数制限など子どもたちの障害予防やスポーツマンシップの醸成などに尽力してきた。

中山道夫校長は「明訓は高い水準での文武両道を追求する学校で、それを象徴する部活動が野球部。人心を一新し、新たな体制で新年度に臨む」と2012年秋から指揮を執ってきた本間健治郎前監督からの監督交代を決断した理由を説明。「佐藤和也監督、本間健治郎監督と続いてきた中、伝統をしっかり踏まえていただける方、勝ちたいのはあるが、そのために何をやってもいいということではない中で、島田氏が思い浮かんだ」と経緯を説明。「明訓ならではのチームを作ってほしい。勝利も欲しいが、勝利至上主義ではなく、明訓野球部だなと思ってもらえるチーム、その先に甲子園が待っていればいいと思う」と期待を寄せた。

島田氏は「決断をしたのは(去年)10月末。話をいただいた時は寝耳に水の話だった。新潟県高野連で専務理事をやり、(県野球界)全体のことを考え、(自身は)側面から野球を応援する立場という気持ちの整理はついていたが、熱心にお誘いいただいたことが決め手となった」と監督を引き受けるに至った自身の気持ちを説明した。

左から中山道夫校長、島田新監督、波間一孝部長、本間健治郎前監督

その上で島田氏は「久しぶりの現場復帰で決断には勇気が必要だった。このような機会を与えていただき、全力で自分の力を試そうと思う。変わりゆく子どもたちの野球環境の中、新しいもの、必要なものは採り入れていく。同時に高校野球が大切にしなければならないものは全力で守る。その両面ができる学校、野球部であると思う」と目指すべきチーム像を説明した。

新潟明訓についての印象は「監督の時、専務理事の時、明訓ブルーが甲子園でも県大会でも躍動する姿を見てきた。監督時代は全力で倒そうと本気でぶつかった。爽やかなユニフォームと選手の笑顔が印象的だった。目標となるチームだった」と話し、「私の目標は『いい野球をすること』。具体的ではないかもしれないが、大事にしたいイメージとして、爽やかで、しかしその裏で泥臭さ、努力の跡が見えるチームづくりに全力を尽くしたい」と力を込めた。

島田氏は球数制限などを提唱した「新潟県青少年野球団体協議会」のプロジェクトリーダーとして、先進的な取り組みを推進してきた。「監督となるため、プロジェクトリーダーからは身を引く」としながら、「球数制限は検証のための1つのステップだった。私はそういうことを推進してきた立場で方向性は同じだが、これから(日本高野連の)有識者会議で1年間検討されるということなので、その意向に従いたい。基本的には今すぐ100球(制限)ということよりも、新潟明訓の野球部としてしっかり選手を守っていきたい」と話し、「スポーツマンシップを意識したチームを作りたい。(甲子園でも)サイン伝達など言われているが、根底にしっかりしたスポーツマンシップがないと瓦解する。明訓はスポーツマンシップに反することと無縁のチームでありたい」と決意を表した。

中山校長によると、島田氏の学校での身分は「教頭」で、保健体育の授業を受け持つという。

また、これまで監督を務めてきた本間健治郎氏は「多くの皆様から応援をいただき、ありがたく思う。この場を借りて感謝と御礼を申し上げたい。今後についてはこれからも野球をやりたいし、与えられた仕事を果たしたい。新監督を迎え、明訓野球部の選手が力強く前進してほしい」と退任の挨拶を述べた。

グラウンドで選手に挨拶する島田新監督(右)

記者会見後、早速グラウンドで2、3年生の野球部員と対面した島田氏は「本間監督の思いをしっかり継いで頑張りたい。久々のグラウンドなので、スタッフの皆さんの力を借りながら、みんなで一緒に頑張りたい。こう見えても結構、厳しいかもしれないが、大丈夫。皆さんの可能性を引き出すことに全力を傾けて、頑張っていきたい」と挨拶した。

岸本大輝主将は「いい意味で明訓高校野球部を変えることができるよう、自分たちも頑張りたい。よろしくお願いします」と新監督に誓った。


◎誰もが認める“人格者” 再びグラウンドへ◎

「バカですよね、他人から見たら…」

3月のある日、取材に対して島田氏がこうつぶやいた。53歳。公務員として定年まであと数えるほどの年数だった。県立高校の教師として歩み、教頭という仕事にやりがいも感じていた。

しかし、安定した仕事を定年前に退職。名門私立高校の監督就任を引き受ける決断をした。

決断の裏にあったのは現在の野球界が抱える多くの問題に対する危機感、そしてそのことに現場で向き合うことができることを“意気”に感じた自分の気持ちだった。

20代、30代と県立高校の監督として甲子園を目指した。あと一歩のところまで勝ち進んだこともあった。

「(若い時は)40代になる自分を自分なりに楽しみにしていた。甲子園に出る監督は40代が一番多い。高田工、新潟南とお世話になり、3校目で『よし。どんな野球ができるかな』と考えていたら、(2007年春から)行政職(県庁)に異動になり、監督ができなかった。その時はショックで…もちろん仕事は一生懸命やった。手は抜いていない。ここは強調したい(笑)。ただ、もう(高校野球の現場に)戻れないと知った時は、県庁近くの信濃川のほとりで泣いた。もう2度とノックバットを持つことができないんだと思ったら、泣けてきた…」

その時、自分なりに「高校野球に対しての気持ちの整理はつけた」と語る。

2009年夏の日本文理の甲子園準優勝の時は、甲子園で応援する知事の傍にいた。県民栄誉賞の受賞が決まると段取りなどに奔走した。

誰もが認める人格者は、その後、新潟県高野連に専務理事として高校野球の舞台に帰って来る。その頃、少年野球の現場である光景を目にする。

「チームの監督が試合中も試合後も、ガンガン子どもたちを怒っている。それも大会の上位に勝ち進んだチーム。これでは子どもたちは野球を楽しいと思わないのではないか。野球を続けたいと思わないのではないか」

専務理事を退任した後の2015年には小学生、中学生、そして高校生の軟式や硬式の団体を越えた「新潟県青少年野球団体協議会」で「始めよう、楽しもう、続けよう」の新たなキャッチコピーのもと、マナー本「新潟メソッド」の作成を陰から支えた。野球人口の急激な減少に歯止めをかけようと汗を流した。

昨秋、新潟明訓の監督就任を要請された時、「(就任は)全く考えなかった」と話す。しかし、徐々に自分の心に抑えきれないものが湧き上がってきた。昨秋の1回戦で自分が教頭を務める村上が新潟明訓に逆転サヨナラ勝ちした。

「(監督就任の)話をいただいてから、運命的なものを感じることがいっぱいあった。(自分がいた)村上と明訓が対戦したのも大きな出来事だった」

2月5日、球数制限についての取材をした際、島田氏はこう話している。

「一番影響力がある高校野球から、いろいろな意味で見本を見せていく必要がある」

「MEIKUN」のロゴが入ったジャケットを初めて着て、グラウンドに立つ島田氏

そして、新年度の4月1日。

前日、県立高校の教師という立場に終止符を打った島田氏は、久々に、“指導者”としてグラウンドに立った。

「監督時代には練習試合でお邪魔して、専務理事時代にはバックネット裏に来たこともあったが、立場が変わってここに立つと、身が引き締まる思い。新鮮な気持ちで立たせてもらった」

40代は現場から離れて過ごした。しかし53歳になって、予想もしていなかった縁から、再びグラウンドの土を踏むことになった。目の前にはかつてと同じ、目標に向かって真っすぐな目をした高校生の姿があった。

「こういうことでグラウンドに戻ってこれるのは幸せなこと。思ってもみなかった」

そして、こう付け加えた。

「できることは絶対に手を抜かない。そういうことは今までのチームでも徹底してきた。明訓の選手もやってくれると思う」

あす2日から、ユニフォームを着て、本格的な指導に入る。高校生とともに、53歳の“青春”が始まる。

(取材・撮影・文/岡田浩人)


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