関甲新学生野球連盟の春季リーグ戦が3日から開幕する。1部の新潟医療福祉大は左腕・桐敷拓馬投手(4年・本庄東)を中心に創部初の優勝を目指し、新たなシーズンのスタートを切る。
今秋のドラフト上位候補に挙がる桐敷はOBの笠原祥太郎(中日)が背負った背番号「18」を初めて背負ってリーグ戦を迎える。桐敷は「ピンチになっても断ち切って、チームを勝たせる投球をしたい」と“エースの証明”を自らの投球で果たしていく覚悟だ。
今秋のドラフト候補・桐敷拓馬(4年) 背番号「18」を背負いエースの投球を誓う
背番号「18」の左腕。1期生のOBでプロ野球・中日ドラゴンズで活躍する笠原を思い起こさせる。笠原を指導した佐藤和也総監督は「現時点で大学時の笠原よりも力は上」と桐敷を評価する。桐敷はここまで、周囲の期待に応えてきた。
桐敷は埼玉県生まれ。本庄東高校から新潟医療福祉大へ進学し、1年秋からリーグ戦で登板。2年秋のリーグ戦では平成国際大戦(2019年9月22日)で先発、初回に一死満塁のピンチを連続三振で切り抜けると、140㌔台中盤の直球とフォークが冴えわたり、面白いように三振の山を築いた。延長10回を投げ18奪三振という関甲新タイ記録を樹立した。
「自分の中でイメージしたフォームで投げることができ、腕も振れました」
3年生となった昨季はコロナ禍で春のリーグ戦が中止となったが、秋のリーグ戦では強豪・白鷗大を相手に4安打、10三振を奪い、1対0で完封勝ち。昨秋は3勝を挙げ、直球の最速は149㌔と大台に迫っている。
「秋の白鷗大戦で完封できたことが自信になりました。あの試合で『もっと上のレベルで野球をやりたい』とプロを目指す決意が固まりました」
鵜瀬亮一監督は「白鷗大戦も含め、チームが苦しい時にしっかりと投げ切ってくれた。エースの自覚が出てきた。そこが一番の成長」と目を細める。笠原、漆原大晟(オリックス)に続き、創部9年目の新潟医療福祉大から3人目のプロ入りが期待されている。鵜瀬監督は「ここまでは順調に成長している。ただ、これからは経験したことがないプレッシャーや視線、期待が押し寄せる。そういうものに打ち勝ってさらに成長してほしい」とさらなる成長に期待を寄せる。
2年秋のリーグ戦では1試合18奪三振のリーグタイ記録をマークした
「公立高校出身(新津高)で1期生の笠原さんがプロに行って活躍している姿をみて、投手を育ててくれる大学だと思いました。自分も高校時代は目立った存在ではなかった。歴史が浅いのに関甲新の1部で戦うことができているのは何か理由があるのではないかと思いました。関東の大学にはいい選手が集まる。だけど、新潟でも、自分の意識次第で力は伸びる。『やってやるぞ』と思って入学しました」
決してここまで順風満帆だった訳ではない。2年春には先発の一角を任されたものの、結果を残せなかった
「マウンドで弱気になってしまい、制球を気にし過ぎて腕を振れませんでした。佐藤監督(当時)から『弱気になってどうする』と何度も言われ…不甲斐なくて悔しさしかありませんでした。今のままではダメだと思い、全体練習後に大学のトレーニング室で体幹や下半身の筋トレを日課にしました」
片脚で行う「ブルガリアンスクワット」やジャンプなどの瞬発系トレーニングで下半身を鍛えた。鵜瀬監督が「夜、帰宅する前にトレーニング室をのぞくと必ず桐敷がいた」と振り返るように、深夜まで黙々と自分の体と向き合った。その成果が1試合18奪三振となって表れた。選手の自主性を重んじる部の雰囲気も桐敷の成長を後押しした。
「埼玉は海なし県。大学はグラウンドの目の前に海があって、今年の正月は初めての大雪も経験しました。初めての経験を通して人間的にも成長できました。新潟に来てよかったと思っています」
創部9年目となる新潟医療福祉大は、笠原が4年時の2016年春のリーグ戦での2位が最高成績で、いまだ全国大会の出場経験がない。
「今はみんなで春のリーグ戦に優勝したいという気持ちが強い。そして全国の舞台で投げてみたい。結果が出れば自然と周りの評価もついてくると思います」
3月28日の新潟アルビレックスBCとの練習試合では5回を投げ2失点も、最速147㌔の直球や随所にフォークで空振りを奪い、ハードオフ・エコスタジアムのバックネット裏に駆け付けた複数球団のスカウトにアピールした。
春のリーグ戦を前に、鵜瀬監督は桐敷に背番号「18」を与える決断をした。1期生の笠原、昨春卒業した飯塚亜希彦(ロキテクノ富山)ら、歴代のエースが付けてきた背番号で、この1年間は空き番号となっていた。
桐敷自身は「背番号は自分からは見えないので、特別に意識はしません」と笑う。その一方で、憧れでもある笠原と比べられることについて、「笠原さんには〝チームを勝たせる〟投球がありました。自分はまだまだ。春のリーグ戦ではチームが勝てる投球をすること。笠原さんのようにタイトルを総なめにするくらいの気持ちで臨みたい」と意欲をみせる。
「ピンチになっても断ち切って、チームを勝たせる投球をしたい」
そう力を込めた桐敷。チームの勝利、そして目標でもある全国の舞台に立つことで、自らの力を証明するつもりである。
3月28日の新潟アルビレックスBCとの練習試合で先発 5回2失点も最速147㌔の直球でスカウトにアピールした
◎新潟医療福祉大の1部・春季リーグ戦日程◎
4月3日(土)12:30…対 山梨学院大(小倉クラッチ・スタジアム[桐生球場])
4月4日(日)10:00…対 山梨学院大(上武大野球場)
4月10日(土)12:30…対 平成国際大(上武大野球場)
4月11日(日)10:00…対 平成国際大(上武大野球場)
4月17日(土)12:30…対 松本大(上武大野球場)
4月18日(日)10:00…対 松本大(上武大野球場)
4月24日(土)12:30…対 関東学園大(上武大野球場)
4月25日(日)10:00…対 関東学園大(上武大野球場)
5月8日(土)10:00…対 上武大(上武大野球場)
5月9日(日)12:30…対 上武大(上武大野球場)
5月15日(土)10:00…対 白鷗大(ベーマガスタジアム)
5月16日(日)12:30…対 白鷗大(ベーマガスタジアム)
5月22日(土)12:30…対 作新学院大(平成国際大野球場)
5月23日(日)10:00…対 作新学院大(平成国際大野球場)
(取材・撮影・文/岡田浩人)
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