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【高校野球】キャプテン…それぞれの夏(上)糸魚川・赤野直道主将 痛恨の失策から成長

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夏が始まる。第97回全国高校野球選手権・新潟大会が10日開幕する。連合2チームを含む参加86チーム(90校)が1枚の甲子園切符をかけて熱い戦いを繰り広げる。3年生にとっては集大成の夏…チームをまとめ、引っ張ってきたキャプテン(主将)はそれぞれのドラマを抱えながら、仲間を鼓舞し、最後の夏の戦いに挑もうとしている。キャプテンの夏…その1人ひとりに負けられない思いがある。


守備ノック。糸魚川の主将で遊撃手の赤野直道(17)は1球1球を魂を込めて捕り、そして正確な送球を心掛ける。

172センチと体は大きくはないが、広角に打ち分けるセンスあふれる打撃に長け、四番打者を任されている。昨年秋の新チーム発足から主将に任命された。牛木晃一監督が「背中で引っ張るタイプ」と評するように、大きな声で仲間を叱咤激励するタイプではない。しかし黙々と汗を流すその姿勢が、チーム内で絶大な信頼を集めている。

黙々と練習に取り組む姿勢でチームを引っ張る糸魚川・赤野直道主将

糸魚川中時代から主将としてチームを引っ張った。そのキャプテンシーが評価され、Kボールの新潟県選抜の主将も任された。3年前の2012年夏、ハードオフ・エコスタジアムでおこなわれた高校野球・夏の新潟大会の開会式で、中学生を代表して先輩たちにエールを送った。
「全国制覇を成し遂げてほしい」
そうメッセージを送る赤野に、スタンドから大きな拍手が送られた。

その夏の大会で地元・糸魚川高校が快進撃を見せた。2年生左腕・石川勇二(現・日体大)の好投もありベスト4に進出。中学3年生だった赤野は心に決めた。
「地元の糸高から甲子園に行きたい」

翌年の2013年春、糸魚川に入学した赤野の野球センスに周囲は大きな期待を寄せた。1年夏からベンチ入りを果たした。注目のサウスポー・石川を擁する糸魚川は夏の有力校の1つに挙がっていた。

迎えた3回戦の新発田農戦。

4対4で迎えた延長10回裏。1年生ながら途中出場した赤野はセカンドの守備についていた。1死満塁。 サヨナラのピンチ。五十公野球場は雨足が強くなっていた。
「正直、自分のところにボールが飛んできてほしくない、と思いながら守っていました」
圧し潰されそうなプレッシャーの前で、赤野は弱気になっていたという。

次の瞬間、前進守備の赤野の目の前にボールが飛んできた。
しっかり捕球をした。しかしホームへ投げようとしたその時、濡れた白球が右手からこぼれ落ちた。

サヨナラ負け。
ぼう然とする赤野に3年生が優しく声をかけた。
「赤野、気にするなよ」・・・その時、初めて自分がした1プレーの重さを実感して涙が溢れた。

2013年7月 3回戦で延長10回サヨナラ負けを喫した

「石川さんがいて注目されていたのに自分のプレーのせいで負けてしまった。後悔しかありませんでした。あの試合で1球の大切さがよくわかりました。その後は守備練習の1球1球から大切に取り組むようになりました」

1年秋、赤野は四番打者に抜擢された。牛木監督は大きな十字架を背負った赤野を、あえて期待が集まる中心に据えたのだ。「赤野の打撃で勝った試合もありました。何よりけがをしない丈夫な選手。そして大きな責任感を持って試合に臨んでいる」と牛木監督。痛恨の失策から赤野は成長した。去年夏、糸魚川はベスト8に進出。そして新チーム発足の際、赤野は主将に任命された。

牛木晃一監督(左)の話を聞く糸魚川の選手たち


選手に指示をする赤野直道主将

「去年の夏は四番を打たせてもらいましたが、1つ上の3年生の力がとてつもなく大きかった。3年生のおかげでエコスタまで連れて行ってもらいました。新チームになってから先輩たちの力の大きさを実感しました」

糸魚川は去年秋は初戦に勝ったものの3回戦で敗退。今年春は初戦で敗れた。「大会で結果が出ていないので何としてもこの夏はリベンジしたい」と赤野は燃える。1回戦で今大会注目のサウスポー・庭山希を擁する小出と対戦する。

「打って勝つのが糸高の野球。庭山投手を打って勝ちたい。しっかり自分たちの野球ができるよう準備したいと思います。とにかく勝つことがすべて。自分の結果よりもチームの勝利を優先して、最後の夏、悔いのないようにやりたい」

そして、自らに言い聞かせるように力を込めた。

「守備も攻撃も、攻める姿勢を忘れずにいきたいと思います」

あの日、プレッシャーから弱気になった自分は、もういない。
赤野はチームのために、そして高校野球を通して成長した自分を確かめるために、最後の夏の舞台に立つ。


「攻める姿勢を忘れずに」と話す赤野直道主将 四番・遊撃手としてチームを引っ張る

(取材・撮影・文/岡田浩人 文中一部敬称略)


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